鈴木亮平
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11月18日(金)~23日(水祝)の6日間、北方文化博物館(新潟市江南区沢海2)で開催していた「新潟の手仕事展」が終了しました。
今回の企画展は、新潟県内7組の職人・作家の作品を、登録有形文化財に指定されている北方文化博物館内で展示をすることで、来場者に作品の本質的な美しさをいっそう感じ、愉しんでいただきたいと願って開催させていただきました。
作品は、器や雑貨、調理器具、照明器具や家具など、日々の生活で使うものばかり。
だからこそ、「家」という場所でこそ、作品が生き生きとして見えると考えました。(北方文化博物館は、「博物館」という名前がついていますが、歴とした豪農伊藤家の住まいです)
各出展者の展示作品の一部をこちらでまとめて紹介します。
1.足立茂久商店
長岡市の寺泊山田集落で江戸時代より続く篩屋(ふるいや)。新潟県内で唯一の曲げ物を生業とする工房で、その実用性の高い篩や裏漉しは、県内の料亭・旅館の板前、和菓子職人が修理を依頼しながら使い続けています。家庭用製品では、電子レンジでも使えるわっぱが全国から注文が入るロングセラー商品に。最近では照明やスツールなどのインテリア製品も手掛けています。
2.庵地焼旗野窯
阿賀野市保田地区の通称「庵地(あんち)」で明治時代から続く窯元。庵地の粘土には鉄分が多く含まれており、旗野窯で調合された黒釉をかけることによって、艶と深みのある「庵地黒」が生まれます。また、重量感と厚みがあり、とても頑丈で、一度円形で作った器を八角形に切り出す「面取り」を施すのも庵地焼の特徴となっています。
3.大橋保隆
燕市の鎚起銅器職人・大橋保隆さん。鎚起銅器とは、燕市に200年前から伝わる伝統工芸。一枚の銅板を金鎚でひたすらに叩き起こし、鍋、湯沸、カップなど、様々な形をつくり出す技術です。職人の修行を始め20年目。手仕事の世界から想像力を育めるような器づくりを目指し、創作活動を続けています。
4.KOUGI
新潟市東区木工団地にある阿部仏壇製作所。「KOUGI」はこちらの3代目・吉田達洋さんが手掛けている木工雑貨ブランドです。仏壇制作に掛ける思いをそのままに、長く使ってもらえることを願い、使いやすさと耐久性を重視した生活雑貨を作っています。「KOUGI」の名前は、先代である父の名前「孝(たかし)」と、義理人情や正義の「義」を組み合わせてつくられたもの。そこには、職人気質だったという先代の精神もしっかりと息づいています。
5.高橋建具製作所
新発田市小舟町にある高橋建具製作所は、杉の枠に、萩や御形などのすだれを組み合わせた夏の建具「簾戸(すど)」を看板商品とする建具店。同社の杉のちゃぶ台は、5年ほど前から建具製作の閑散期に作られてきたもの。金物を使わずに、ほぞ組や木釘を用いて一つ一つ手作業で作り上げていきます。涼しげな見た目と、柔らかな曲線に美しい木目、ついなでてしまいたくなるような優しい肌触りは、とても親しみやすく、ほっとした気持ちにさせてくれます。
6.原惣右エ門工房
江戸時代に梵鐘や塩釜の生産で栄えた柏崎市大久保で、今も伝統の鋳造技術を継承する工房。現在は四代目のもと、息子夫婦の原聡さん・嘉子さんが鋳物の制作を行っています。ここで行われている鋳造技術の一つ“蝋型鋳金”は、松脂と蜜蝋を混ぜたもので型をつくり、細やかな意匠の銅器を生み出す技法で、県の無形文化財に指定。“斑紫銅”は、銅器の表面に不規則な紫色の模様を浮かび上がらせる技法。磨き上げた銅器を炎の中に入れることで現れる模様は、同じものがこの世に二つと見られない、炎が生み出した芸術と言えます。
7.falaj
上越市を拠点にガラスの器や小物、ステンドグラスを手掛けるfalaj(ファラジ)は、丸山慎二郎さんと宮下淳代さん夫婦が営む工房。さまざまなガラスを組み合わせて電気炉で焼いて融合させる“フュージング”という手法でつくり出すガラスの器は、色が混ざり合うことなく仕上がるのが特徴です。falajとは、オマーンの灌漑設備の名称で、“貴重なものを分かち合う”という意味を持ちます。色鮮やかな器は、料理を盛り付ける皿としてはもちろん、空間に豊かな色彩を添えてくれるインテリアとしても活躍します。
量産される工業製品は、今や私たちの生活に必要不可欠なものですが、職人・作家の手仕事で生み出されるものは、それとは全く異なるものです。
作り手の感性や技術が詰め込まれた、表情豊かな手仕事による製品・作品は、量産品にはない人間味にあふれています。
そんなものとの出会いを企画展を通して多くの人に楽しんでもらいたいと考えましたが、6日間の会期はあっという間に終わってしまいました。
この記事にアップした、北方文化博物館の美しい庭の風景と一緒に撮影した作品の写真を通して、ものや作り手への興味を深めて頂けら幸いです。
そして、興味のある方はぜひ工房を訪れて、作り手の方と話したり、直接ものを購入したりしてみてはいかがでしょうか?そのプロセスもまた、ものとの距離をぐっと縮めてくれる特別な体験になることと思います。
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