建具屋独自の技で生み出す、長岡発の家具シリーズ

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長岡市中心部にある、創業88年の建具店「野村木工所」。こちらの木工所が、数年前に建具店独自の技術を使って、新しい家具ブランドを立ち上げました。

この家具ブランドは2011年に立ち上げられ、この4年の間に4つの商品を生み出しています。

まだ事業化の途中だそうですが、建具技術を生かした一度見たら忘れられないユニークな家具は、メディアや各地の百貨店や見本市などでの出展を通して、年を追うごとに認知が広がってきているそうです。

長岡市日赤町にある野村木工所は1927年創業の建具店。この界隈はかつて「大工町」と呼ばれ、木工所が集まる場所でした。

しかし、時代の流れとともに、地場の木工所は少しずつ姿を消し、現在この野村木工所の建物以外に大工町の風情を感じさせる建物は周辺には見当たりません。

そんな野村木工所の事業の柱である建具製作も、大手建材メーカーの安価な建具に押され、事業の衰退期を迎えていました。

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かつての「大工町」に今も残る野村木工所。

 

 

百年物語との出会い

「住宅会社やゼネコンからの建具発注が減っていく中で、新規事業を作り出す必要に迫られていました。それを模索していた時期に、NICO(公益財団法人にいがた産業創造機構)が運営する新潟のものづくりのブランディングプロジェクト『百年物語』で当時ディレクターを務めていた芳賀修一さんに出会いました」(野村さん)。

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野村木工所代表・野村泰司さん

百年物語は毎年県内のものづくりの中小企業が参画し、プロのデザイナーのアドバイスを受けながら商品開発を進めるというもので、完成した製品群は「百年物語シリーズ」として、フランクフルトやパリをはじめ、国内外の見本市に出展されます。

野村さんがちょうど新規事業の立ち上げについて考え始めた時期に、百年物語の芳賀さんと出会えたそうです。

「百年物語では、応募から完成まで約半年間という短い期間の中で、プロのデザインアドバイザーから厳しい指導を受けながら開発を進めていきます。すでに大手家具メーカーが高いシェアを占有している中、新しい家具ブランドを立ち上げるには、コンセプトやターゲットに独自性を持たせる必要がありました」と野村さん。

 

建具の技を使った家具シリーズ「IKSKI」の誕生

野村さんが考案したのが、商品コンセプトに「建具屋の技術」を入れることと、首都圏の富裕層をメインターゲットとすることだったと言います。

家具屋と建具屋では、そもそも使われる技術も機械設備も異なるそうで、建具屋にしかできない技術を使った家具づくりで差別化を図ることが肝となりました。

「『抜き』や『相欠き』といった、細かな格子を組み合わせる技法を、テーブルやイスなどの家具にふんだんに盛り込んでいます」と野村さんが話すように、そこには建具屋ならではの細やかな技が素人目にも見て取ることができます。

そして、その細工がとても日本らしいコンセプトを感じさせると同時に、シンプルなシルエットがモダンさを感じさせ、現代の暮らしにフィットするものとなっています。

「私たちが作る家具は、手間暇を掛けてじっくりとつくり上げるものです。その分価格も高くなりますので、富裕層の多い首都圏での販売を想定して商品企画をしています。ですので、例えばマンションなどで邪魔にならないように、『コンパクトに収納できること』にもこだわって作っています」(野村さん)。

コンパクトに収納するための仕組みは、雪見障子に使われるスライドさせる技術が生かされています。

百年物語に初めて参加した2012年に制作したのが、ウォールナットを使ったネストテーブルでした。3つのテーブルが入れ子のようにコンパクトに収納できるのはもちろん、それぞれの天板が拡張できる仕組みになっています。スライドをさせることで浮かび上がる曲線などは、建具屋だからこそのデザインと言えます。

このシリーズはIKSKIと名付けられ、Extend[ikstend]する木、木が好き、息のように吸って吐く<自然Shizen>…と言った意味が込められています。

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2年目の2013年に作られたのは、伸縮ができるベンチ。1人がけのベンチがスライドすることで2人掛けのベンチに変わります。シンプルで分かりやすいデザインが受けて、IKSKIの中でも問い合わせが多い商品となっているそうです。

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2014年はZ型のコーヒーテーブル。こちらもスライドさせることで天板の幅を変えることができます。

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2015年モデルは折りたためる4人用のティーテーブル。立体パズルのように折り畳むことができます。中心には花を飾れるスペースも設けられた粋なデザインとなっています。

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合板を使った家具の開発をスタート

すべてに格子が使われたIKSKIシリーズですが、2016年はIKSKIとは異なる新しいブランドで百年物語に出品をするそうです。「IKSKIは金額が高いこともあり、動きが鈍い商品です。今開発をしているのは、合板を立体パズルのように組んで使う組み立て家具。安価な価格帯で、流通しやすい商品を目指したい」と野村さん。

伝統的な建具屋から、家具製作へと新しい挑戦を始めた野村木工所。「百年物語に参画してから、様々なものづくりの作家さんや職人さんとの繋がりができ、それが大きな刺激になっています。そして、百年物語の活動をしたことで信用も上がり、本業の建具の受注も増えるようになったんですよ」(野村さん)。

新しい一歩を踏み出したことにより、さまざまな変化を感じている野村さん。建具屋というこれまでの自社の定義を変えることで、新しい可能性を切り開き始めています。

「大工町」という名前が消えてしまったかつての大工町ですが、野村木工所の前を通ると、工場からは職人さんたちが制作をする音が響いてきます。オートメーション化された大きな工場ではなく、長岡に根差して真摯に建具や家具の制作を続ける野村木工所。この木工所の前を歩けば、ただ伝統を守るだけではなく、新しい伝統を生み出そうという強い気概も通りまで響いてくる工場の音から感じることができます。

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有限会社 野村木工所
住所:新潟県長岡市日赤町1-7-16
TEL:0258-33-2014
URL:http://nomu.s1.bindsite.jp/
MAIL:n.tategu@sage.ocn.ne.jp

百年物語
URL:http://www.nico.or.jp/hyaku/

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